【旅立ち】
不思議な力が消滅し、不思議な島はただの海に変わった。
クロマニョンヌは以前言っていた。
「オラはこの島から出えーねえズラ。そーゆう決まりズラ」
出えーねえ、とは、出られない、の意味である。
しかし、その島が消滅した以上、
その「決まり」とやらも変わったのではないだろうか?
クレイは勇気を出して聞いてみた。
「クロマさんはどうするんですか?」
クロマニョンヌは答えない。
今までも、老人のようにぼーっとしていることはよくあった。
推定12000歳という高齢を考えれば仕方のないことだ。
そう考えて、しばらく波の音を聞きながら待った。
「オラ、行かなきゃなんねーズラ」
突然クロマニョンヌは強い口調で言った。
自分から何かしたいというだけでも珍しいのに、
初めて見せる強い意志にクレイは驚いた。
「このまんまでは世界が大変なことになるズラ。
原子力発電に変わって、原始力発電を普及させねーと、
文明が人類を滅ぼしてしまうズラ!」
「ちょっと何言ってるかわからないです。」
「そーゆう訳だんて、クレイ、レイム、
オラちょっくら日本に出かけてくるズラ」
クロマニョンヌはそれだけ言って、ざぶざぶ海を泳いでいった。
なぜか後ろ向きに、全速力で、こちらに手を振りながら。
あっけにとられながら、2人は彼を見送った。
大海原を進みながら、クロマニョンヌは
「……2人にはああ言うしかなかったのデス」
と独り言を言った。
絶対、ほかに言い様はあったと思うが、
2人の前では最後までクロマニョンヌでいたかったのだ。
* o ∴::.。.:*・゜.∴ * o∴・.゚.・∴..*.+.:: ∴ o *
数週間後、日本・片瀬探偵事務所。
「久し振りだねえ、ロボ……ずいぶんデザインが変わったね」
そういって彼を迎えたのは、探偵の片瀬ケイヤ。
かつてクロマニョンヌがブルギニョンヌだったころ、
オーナーであるノーチェと共に行動していた男である。
「五所川原博士の研究所で打ってもらった信号が、
いまさら君のところに届くとは思わなかったよ。
のーちゃんは今、お使いに出ているけどそのうち戻ってくるよ」
数年ぶりの再会だというのにこの男は平然としている。
時間を進められたブルギニョンヌにとっては12000年ぶりということになるが、そのへんはロボには関係なかった。
「ノーチェ様は怒っておられマスか?」
「逆かな、謝りたいって」
「カタセ様には感謝の言葉もございマセン。
ノーチェ様の危ないところを救って下さったとききマシタ」
「別に…打算でやったことだし。
代わりに12000年の歪みに落ちた君のほうが、よっぽど偉い。
ところでどこで聞いたのそんな話」
「ここに来る途中、ノーチェ様のtwitterで」
片瀬はコーヒーを吹いた。
不思議な力が消滅し、不思議な島はただの海に変わった。
クロマニョンヌは以前言っていた。
「オラはこの島から出えーねえズラ。そーゆう決まりズラ」
出えーねえ、とは、出られない、の意味である。
しかし、その島が消滅した以上、
その「決まり」とやらも変わったのではないだろうか?
クレイは勇気を出して聞いてみた。
「クロマさんはどうするんですか?」
クロマニョンヌは答えない。
今までも、老人のようにぼーっとしていることはよくあった。
推定12000歳という高齢を考えれば仕方のないことだ。
そう考えて、しばらく波の音を聞きながら待った。
「オラ、行かなきゃなんねーズラ」
突然クロマニョンヌは強い口調で言った。
自分から何かしたいというだけでも珍しいのに、
初めて見せる強い意志にクレイは驚いた。
「このまんまでは世界が大変なことになるズラ。
原子力発電に変わって、原始力発電を普及させねーと、
文明が人類を滅ぼしてしまうズラ!」
「ちょっと何言ってるかわからないです。」
「そーゆう訳だんて、クレイ、レイム、
オラちょっくら日本に出かけてくるズラ」
クロマニョンヌはそれだけ言って、ざぶざぶ海を泳いでいった。
なぜか後ろ向きに、全速力で、こちらに手を振りながら。
あっけにとられながら、2人は彼を見送った。
大海原を進みながら、クロマニョンヌは
「……2人にはああ言うしかなかったのデス」
と独り言を言った。
絶対、ほかに言い様はあったと思うが、
2人の前では最後までクロマニョンヌでいたかったのだ。
* o ∴::.。.:*・゜.∴ * o∴・.゚.・∴..*.+.:: ∴ o *
数週間後、日本・片瀬探偵事務所。
「久し振りだねえ、ロボ……ずいぶんデザインが変わったね」
そういって彼を迎えたのは、探偵の片瀬ケイヤ。
かつてクロマニョンヌがブルギニョンヌだったころ、
オーナーであるノーチェと共に行動していた男である。
「五所川原博士の研究所で打ってもらった信号が、
いまさら君のところに届くとは思わなかったよ。
のーちゃんは今、お使いに出ているけどそのうち戻ってくるよ」
数年ぶりの再会だというのにこの男は平然としている。
時間を進められたブルギニョンヌにとっては12000年ぶりということになるが、そのへんはロボには関係なかった。
「ノーチェ様は怒っておられマスか?」
「逆かな、謝りたいって」
「カタセ様には感謝の言葉もございマセン。
ノーチェ様の危ないところを救って下さったとききマシタ」
「別に…打算でやったことだし。
代わりに12000年の歪みに落ちた君のほうが、よっぽど偉い。
ところでどこで聞いたのそんな話」
「ここに来る途中、ノーチェ様のtwitterで」
片瀬はコーヒーを吹いた。
【来訪者】
その日は朝からひどい雨だった。研究所の大きな窓から見える海は、もうお昼時だというのに真っ黒で、波しぶきがときどき稲妻に照らされていた。
南海の孤島でブルギニョンヌとノーチェが連絡を絶ってからかなりの時間が流れた。五所川原博士でさえ捜索の糸口をつかめずにいた。研究員でもないディアには当然なす術なんてなくて、ただジョースター家のような「凄み」で姉の生存を理解しているだけだった。養女の契約も白紙となり、ノーチェは公的に失踪者となっていた。
だから、その日たまたまディアがとった電話は、研究所内を揺るがす出来事となった。
「博士の弟子、ノーチェ・バレラの件で伺いたい」
若い男の声。要件ははそれと連絡先だけ。仕方なくディアが「謎の東洋人Kから」と博士に伝えると、博士はその日のうちに彼と面会することを決めた。
彼はすぐに研究所にやってきた。間違いなくアポが通るであろうことを確信して、近場から電話をかけてきていたのだ。つまり、いち失踪者にすぎないノーチェの情報の価値を、正確に把握しているということになる。五所川原博士とディアは緊張した面持ちで彼を迎えた。
「初めてお目にかかります、五所川原博士」
彼――ちょっとワルっぽい探偵で、片瀬ケイヤと名乗った。行方不明になる直前まで、ブルギニョンヌとノーチェに同行していたらしい。確かに、片桐の報告にあった男に一致する風貌だ。
「今日お知らせしたいのは、のーちゃ……いやノーチェさんに関する情報です」
「君はノーチェ君がどこにいるか、知っているのか?」
「慌てないで頂きたい、博士。まずはノーチェさんが『何をしたか』を明らかにしたいのです」
片瀬はそう言うと、うすいカバンから何かがプリントアウトされた紙の束を取り出した。ディアにはさっぱり意味のわからない単語の羅列だったが、博士は何が書かれているのかすぐに理解できたらしく、神妙な表情になってページをめくる速度を上げた。
「最初にあの島へ行ったあとのノーチェさんの研究の記録です」
「どうやってこれを?ブルギニョンヌの記憶領域にかかってるプロテクトをクリアしたのか?」
「僕の手元にあるということは、まあ、そういう事です」
かつて片瀬はブルギニョンヌに「男の約束」をとりつけ、さらっと内部データを見せてもらうことに成功していた。ロボのくせに「命令」より「男気」を優先してしまうプロテクトはどうかと思う。
「まずは人体を構成する物質の合成値のメモが並んでいます。次に、『おにく20』に関する大量の資料。これは博士から送付されています」
博士は片瀬の説明をだまって聞いている。
「僕の調べでは、ノーチェさんは……自分の体を使って、物質合成による若返りの研究をしていた。違いますか、博士?」
人体への物質合成の行使は国際法で厳しく制限されている。
五所川原博士は心なしか青ざめているように見えた。
……ノーチェ姉が犯罪者?
言葉の意味はわからないが、とにかく大変な事態だ。
ディアは挙手して、博士と探偵の両方に向けて質問した。
「なんで、『おにく20』の研究が、若返りと関係あるんですか?」
「鮮度だ」
五所川原博士より先に、片瀬が口を開いた。
「この『おにく20』というのは不思議な食料で、完全に劣化して腐ってしまっても、パンくずなどを加えて物質合成にかけると、また元の鮮度を取り戻す。その後も、それなりの素材で物質合成してやれば、何度でも元の鮮度に戻る。『おにく20』は、エントロピーをくつがえす、エネルギー源たりうるんだよ」
老化とはすなわち、細胞の分裂回数の限界であり、DNA修復力の枯渇である。しかし『おにく20』の細胞は、合成強度を継ぎ足してやれば、ガン化することもなく働き続ける。
ノーチェがブルギニョンヌの物質合成装置を使えば、この細胞を人体にとりこむ研究をすること自体は不可能ではない。
「ノーチェさんがエスカルゴ社の化粧品部門に送った、若さを保つ技術の提供に関するメールが残っています。そして、この赤いお菓子の入った瓶の写真。調べてみたら、このメーカーからはイチゴ味なんて発売されていない。この赤い物体はノーチェさんが作ったものだ」
片瀬から写真を手渡された博士は、うめくように言った。
「ノーチェ君がなんの研究をしているかは、うすうすわかっていたよ。
……しかし、なぜ君が気付いた?
若返った人間が目の前にいたからといって、『おにく20による若返り』なんて仮説は普通の人間には出せないと思うが」
片瀬はディアのほうに一歩近づいた。
「ではお嬢さん、お伺いしましょう。赤の反対は何色かな?」
「え?」
「赤の反対。色相的に緑かな?それとも紅白の白?ルージュorノワールで黒?」
ディアが片瀬の質問の意味を捉えかねている間に、五所川原博士が口を挟んだ。
「何を言ってるんだ?」
「きっかけは些細なことです。ブルギニョンヌが以前、『赤の反対は青』と即答していました。その場のだれ一人、そんな事は言わなかったのに。」
それを聞いた瞬間、ディアは叫んだ。
「赤いキャンディと青いキャンディですね!わかります!」
若返るといえば赤いキャンディ。これはもはや常識。
ブルギニョンヌが赤と青の対比を覚えていたのは、記憶を失うまえのノーチェが、研究中の薬品にそういう名前をつけていたからではないか……謎の赤い物体の映像を見てから、片瀬の予感は確信に変わっていた。
「それでノーチェ姉は子どもの姿に?……でも、ノーチェ姉、すごく困ってるように見えたけど」
「それなんだ」
片瀬はオーバーアクションぎみに人差し指を立てた。
「おそらく、ちょっとだけ肌年齢を戻す程度の効果のつもりだったんだと思う。だが、効き過ぎてしまった」
五所川原博士が顔を上げる。
「赤だけに3倍効いた、ということか!!」
「いや、そうは言ってませんが」
「なるほど赤い奴なら仕方ない」
勝手に納得する博士と、再び困惑するディアを交互に見たあと、片瀬は真面目な顔になって切り出した。
「想定外の結果になったとはいえ、物質合成を人体に行使したことは事実。これが公表されたら、お弟子さんの不祥事ですね、博士」
そう言って写真と資料をカバンにしまう。
「私を脅迫しようと言うのかね?」
五所川原博士はメガネを光らせて顔を上げ、片瀬を見た。
この若い探偵は、まったく物怖じする気配もなく、書類をカバンにしまい直している。
その書類を公にすれば、研究所には少なからぬダメージがおよぶことはこの場の誰もが理解していた。
完全なアウェー、敵地だというのにこの男の余裕は何だ。
「脅迫。……まあ、そのようにとられたほうが話が早いかもしれません」
「しかし、片瀬君、問題が2つだ。
ひとつは、我が研究所の関係者が合成技術を悪用し幼児化して失踪した……なんて話を警察が信用するか、ということ。
もうひとつは、君がここから無事に帰れるのかということだ」
脅迫には脅迫を。
博士はやられたらやりかえすタイプの人間だった。
だがそれは典型的悪役の敗北パターンであることも同時に承知していた。
現に、片瀬はまったく動じる様子もない。
「この資料のほかに、信用させるだけのネタがあるから、今日わざわざ来たんです。もちろん、今僕を始末しても大きな損失になりますよ」
「まあ、そうだろうな……。
つまり、そのネタっていうのは……そういうことなのだね? 今頃になって書類を携えて来たってことは……」
「そういうことです。博士も、それがわかっていたから、そこのお嬢さんをここに同室させたのでは?」
片瀬は「どういうことだってばよ」という顔をしているディアのほうに手をかざして言った。
ディアはびっくりして飛び退く。
この探偵は全貌を知っている。少なくとも知っているように見せかけられる程度には情報を持っている。博士はこの若者を信用することにした。
「では私に選択の余地はない。いいだろう、片瀬君、そのネタを言い値で買おうじゃあないか」
「商談成立だ。えっと、じゃあすいません、このディスプレイお借りしますよ……っと」
片瀬は携帯端末の電源を入れ、それを手際よく研究所のディスプレイと接続した。
手元で操作をすると、1コールを待たずに大声が聞こえてきた。
「ちょっとカタセッ!!何ケータイの電源切ってんの貴方、私は待たせるのは好きだけど待たされるのは大ッ嫌いなんですからね!!」
画像は少し乱れ、やがて青い髪の女の子を映し出す。
博士が、ディアが、口をあけて視線を釘付けにする中、画面の中のノーチェは紳士としての自覚がないだの悲惨な友達しかいないだのと、淀みなく罵詈雑言を紡ぎ続けた。
片瀬はひとしきりそれを受け流したあと、
「でね、のーちゃん、実はこのビデオチャット、研究室につながってるんだけど」
といって突然、携帯端末のカメラを博士のほうに向けた。
ノーチェは一瞬、大人の頃より相対的に大きな目を見開くと、画面を指で覆った。暗い肌色で覆われた画面から、さらにトーンの上がった罵詈雑言が届く。
博士は唖然とし、ディアは口をぱくぱくさせて画面を見ている。片瀬はぱたん、と端末を閉じて、強引に通話を切った。
「じゃあ、ちょっとあの子連れてきますんで」
手を挙げて退室する片瀬の後ろ姿は、完全に父兄のそれであった。
数分して、片瀬は青い髪の少女の手を引いて、再び研究所に戻ってきた。
報告では聞いていたものの、実際に幼児化したノーチェを目の当たりにして五所川原博士は絶句した。
一方ディアは目を輝かせて「ノーチェ姉かわいい!」と連呼した。
ノーチェはそのどちらにも目を合わせず、不釣り合いに長い髪を指先でくるくるいじるばかりだった。
「ほらのーちゃん、ゴメンナサイは?」
片瀬が腰をかがめて頭をなでながら言う。必要以上に子ども扱いすることでノーチェにハラスメントをしているのだ。
このようなハラスメントを静岡弁で「きもいらせ」という。
「み、みんなの前では『ノーチェさん』って呼ぶって言ったじゃない!年上なんですからね!」
ノーチェはやや的外れな非難をした。
しかし片瀬が真面目な顔に戻って「ちゃんと謝るのがオトナだ」と反論したので、ぐぬぬと唸らんばかりの表情で博士のほうを向いた。
「博士、申し訳、ありませんでした……私、取り返しのつかないことを」
「何を言ってるんだノーチェ君、人体合成のことなら……」
「私、ブルギニョンヌを失いました」
その言葉で、さしのべようとしていた博士の手がだらりと戻った。
ディアもさすがに空気を察し、固唾をのんで博士の言葉を待っている。
五所川原博士は静かに言った。
「認めないね。だが一応、説明してみなさい」
ノーチェはすでに泣きそうになっていた。子どもの体は叱られるモードになると勝手に涙が出てくるのだ。
「あの島の調査を進めるうちに気付いたの。あの島の力は『時間』……時間を止めたり、進めたり、やりなおしたり、そういう力を持った何ががある島だったのよ」
島の力は暴走し、滞在していた多くの冒険者を外にはじき出した。いまだに行方不明の者も多いという。
「暴走が始まったとき、うちゅうのほうそくがみだれる!と思った。信じてもらえないと思うけど、草花が瞬く間に枯れたり、砂が石に戻ったりするのを見た。でも私は避難しなかった。この体を元に戻せるかもしれない、って思ったら、足が前に出ていたの」
「少女の願いはエントロピーを凌駕するって言うしね」
片瀬がわざとらしくためいきをつきながら口を挟んだが、ノーチェはそれを気にせず話を続けた。
「島の力に触れたかった。ちょっと時間を進められれば、……あるいは、あの日の過ちをやりなおせたら、って。馬鹿よね、相手は法則も何もない現象なのに」
ノーチェがしゃべっている間、五所川原博士はずっと黙っていた。
それゆえノーチェは話をいったんとめて、上目遣いで博士の様子を伺ったが、無駄だと観念して続けた。
「ブルギニョンヌは、私をかばって、島の力の渦に巻き込まれた。
一瞬で反応が消えていくのが、スローモーションみたいにわかったわ。
私は、気がついたら、島の外に……」
「だいたいわかった」
「でも博士!」
「だいたいわかった、と言ったんだノーチェ君。
……君がこうして戻ってきただけで十分だ」
五所川原博士はそのままノーチェと目を合わせず、片瀬に話しかけた。
「ありがとう片瀬君、私はなんとお礼をしていいのか」
「まあね、幸運でしたよ。
偶然スペインの港町の孤児院に変な青い子がいるって聞かなかったら、絶対見つけられなかったでしょう」
「あんたの場合、偶然って言葉もわざとらしいわ」
ノーチェは完全に元のテンションに戻っていた。
子どもの感情は切り替えが早いのだ。
「それで、君の望みはなんだね?
即金で出せる額はそんなにないが……役に立つかわからん特許ならたくさんある」
「ええ、その報酬の話なんですけどね……」
片瀬はなぜか、切り出しにくそうに言いよどむ。
五所川原博士はいくつか報酬を提示した。
「たとえばコレなんかどうかね、こいつはちょっとした鍵からパスワードまでこれ一本で開けてしまう超時空カギマシンだが」
「いや、そーゆーのはいいです、僕が仕事で使ったら法に触れてしまう」
「では君の望みは……?」
「こんな言い方をすると誤解されるかもしれませんけどね、この子の身柄を預からせて頂きたい」
片瀬はそう言ってノーチェの頭をつかんだ。
腕を組んで「うんうん」と頷いていたノーチェは、突然のこの発言にワンテンポ遅れて奇声をあげた。
なぜかそれに呼応してディアも奇声をあげた。
「わあー!それってつまり、ケッコンですか!ノーチェ姉!」
「違うわよ!馬鹿!勝手に何言ってくれてんの貴方は!」
片瀬と五所川原博士はそれを無視して話を進めている。
「探偵にとって願ってもないんですよ、体は子ども、頭脳は大人っていう存在は」
「それは私に蝶ネクタイ型変声機を発明しろということかね」
「なかなか話が早い、是非お願いしたいところですがそれは別件にしましょう。真面目な話、都合がいいんです。戸籍上は失踪してて、身分証を偽造すればどこにでも潜り込める。助手として最高だ」
ノーチェはカバンをもった片瀬の腕をぐいぐい引っ張っている。
「ちょっ……ちょっと勝手に話を進めすぎでしょ貴方たち!!」
それを見て、なぜか逆側の腕をディアが引っ張り出した。
「ノーチェ姉ばっかりずるい!私も探偵助手やりたいもん!
私も連れてって!泥棒はまだできないけれど、きっと覚えます!」
明らかに何か勘違いをしているディアを、片瀬は「バカなことを言うんじゃーないよ」とルパンの物まねをしながら軽くいなす。
五所川原博士も片瀬に近づいて言った。
「いいだろう、片瀬君。
失踪扱いのままここで匿うよりずっと安全だ。
だたしひとつ条件をつけてくれ」
「……何でしょう」
「いちおう期限を切っておきたい。
この契約、ノーチェ君の体が元に戻るメドが立つまで、としてくれ」
博士は流行りの言葉で期限を指定した。
横を向いたまま、片瀬が大きく頷く。
「ああ、そうですね、それは妥当です。
別にケッコンするわけじゃないので、無期限というわけには行きません」
「なんだ、ケッコンしないんだ」
なぜかディアが不服そうな顔をすると、こんどはノーチェはそっちの腕をつねりにいった。
自由になった片瀬はようやく博士のほうを向く。
「しかし博士、その場合、問題がひとつ」
元に戻るためには、もちろん研究のための機材がいる。
研究所から離れては当然研究はすすまず、元に戻るメドは立たない。
事実上これでは無期限になってしまう。
「片瀬君、その心配は要らない。
どのみち、ノーチェ君の研究機材はここにはない」
ようやくノーチェが会話の流れに追いついてきた。
「そうよ……ブルギニョンヌの合成回路がないと私、
研究の続きをすることもできないのよ」
「だから、片瀬君、ノーチェ君。
ブルギニョンヌを回収しに行きたまえ」
ディアを含め、全員が顔を上げて博士を見た。
「事故が起きてから行方不明になっていたブルギニョンヌだが、まだあの島に存在している。
ノーチェ君の話を聞いて確信した。
ブルギニョンヌは一瞬で、1万年と2千年の時を進められて……
自分がロボであることも忘れ、記憶も淘汰されて、
それでもなお合成を繰り返してシステムを維持している。
今は現地でクロマニョンヌと呼ばれている超原始ロボ。
それは時間の歪みに落ちたブルギニョンヌの姿なのだ」
ノーチェは戦慄した。
博士は静かに続ける。
「また、島に異変が起きている。すぐに向かいなさい。
上陸は難しいかもしれないが、必ず会えるハズだ。
大丈夫、私のロボは死にはしない」
「わかりました、五所川原博士。ありがとうございます」
片瀬は、ノーチェに引っ張られるようにして研究所を出て行った。
子どもの体は行くと決めたら常にBダッシュなのだ。
博士はディアとともにその後姿を見送った。
「行ってしまったな……なんと気持ちのいい連中だろう……」
「別に私の心は盗んでませんけどね」
「それは知っている」
博士は「我々ヒトも、一万二千年の間に自分の正体を忘れ、理性ある特別な存在だと思い込んで生きているのではないか」みたいな鼻につくセリフを用意していたが、別にこのタイミングでディアに言っても仕方ないか、と思って諦めた。
その日は朝からひどい雨だった。研究所の大きな窓から見える海は、もうお昼時だというのに真っ黒で、波しぶきがときどき稲妻に照らされていた。
南海の孤島でブルギニョンヌとノーチェが連絡を絶ってからかなりの時間が流れた。五所川原博士でさえ捜索の糸口をつかめずにいた。研究員でもないディアには当然なす術なんてなくて、ただジョースター家のような「凄み」で姉の生存を理解しているだけだった。養女の契約も白紙となり、ノーチェは公的に失踪者となっていた。
だから、その日たまたまディアがとった電話は、研究所内を揺るがす出来事となった。
「博士の弟子、ノーチェ・バレラの件で伺いたい」
若い男の声。要件ははそれと連絡先だけ。仕方なくディアが「謎の東洋人Kから」と博士に伝えると、博士はその日のうちに彼と面会することを決めた。
彼はすぐに研究所にやってきた。間違いなくアポが通るであろうことを確信して、近場から電話をかけてきていたのだ。つまり、いち失踪者にすぎないノーチェの情報の価値を、正確に把握しているということになる。五所川原博士とディアは緊張した面持ちで彼を迎えた。
「初めてお目にかかります、五所川原博士」
彼――ちょっとワルっぽい探偵で、片瀬ケイヤと名乗った。行方不明になる直前まで、ブルギニョンヌとノーチェに同行していたらしい。確かに、片桐の報告にあった男に一致する風貌だ。
「今日お知らせしたいのは、のーちゃ……いやノーチェさんに関する情報です」
「君はノーチェ君がどこにいるか、知っているのか?」
「慌てないで頂きたい、博士。まずはノーチェさんが『何をしたか』を明らかにしたいのです」
片瀬はそう言うと、うすいカバンから何かがプリントアウトされた紙の束を取り出した。ディアにはさっぱり意味のわからない単語の羅列だったが、博士は何が書かれているのかすぐに理解できたらしく、神妙な表情になってページをめくる速度を上げた。
「最初にあの島へ行ったあとのノーチェさんの研究の記録です」
「どうやってこれを?ブルギニョンヌの記憶領域にかかってるプロテクトをクリアしたのか?」
「僕の手元にあるということは、まあ、そういう事です」
かつて片瀬はブルギニョンヌに「男の約束」をとりつけ、さらっと内部データを見せてもらうことに成功していた。ロボのくせに「命令」より「男気」を優先してしまうプロテクトはどうかと思う。
「まずは人体を構成する物質の合成値のメモが並んでいます。次に、『おにく20』に関する大量の資料。これは博士から送付されています」
博士は片瀬の説明をだまって聞いている。
「僕の調べでは、ノーチェさんは……自分の体を使って、物質合成による若返りの研究をしていた。違いますか、博士?」
人体への物質合成の行使は国際法で厳しく制限されている。
五所川原博士は心なしか青ざめているように見えた。
……ノーチェ姉が犯罪者?
言葉の意味はわからないが、とにかく大変な事態だ。
ディアは挙手して、博士と探偵の両方に向けて質問した。
「なんで、『おにく20』の研究が、若返りと関係あるんですか?」
「鮮度だ」
五所川原博士より先に、片瀬が口を開いた。
「この『おにく20』というのは不思議な食料で、完全に劣化して腐ってしまっても、パンくずなどを加えて物質合成にかけると、また元の鮮度を取り戻す。その後も、それなりの素材で物質合成してやれば、何度でも元の鮮度に戻る。『おにく20』は、エントロピーをくつがえす、エネルギー源たりうるんだよ」
老化とはすなわち、細胞の分裂回数の限界であり、DNA修復力の枯渇である。しかし『おにく20』の細胞は、合成強度を継ぎ足してやれば、ガン化することもなく働き続ける。
ノーチェがブルギニョンヌの物質合成装置を使えば、この細胞を人体にとりこむ研究をすること自体は不可能ではない。
「ノーチェさんがエスカルゴ社の化粧品部門に送った、若さを保つ技術の提供に関するメールが残っています。そして、この赤いお菓子の入った瓶の写真。調べてみたら、このメーカーからはイチゴ味なんて発売されていない。この赤い物体はノーチェさんが作ったものだ」
片瀬から写真を手渡された博士は、うめくように言った。
「ノーチェ君がなんの研究をしているかは、うすうすわかっていたよ。
……しかし、なぜ君が気付いた?
若返った人間が目の前にいたからといって、『おにく20による若返り』なんて仮説は普通の人間には出せないと思うが」
片瀬はディアのほうに一歩近づいた。
「ではお嬢さん、お伺いしましょう。赤の反対は何色かな?」
「え?」
「赤の反対。色相的に緑かな?それとも紅白の白?ルージュorノワールで黒?」
ディアが片瀬の質問の意味を捉えかねている間に、五所川原博士が口を挟んだ。
「何を言ってるんだ?」
「きっかけは些細なことです。ブルギニョンヌが以前、『赤の反対は青』と即答していました。その場のだれ一人、そんな事は言わなかったのに。」
それを聞いた瞬間、ディアは叫んだ。
「赤いキャンディと青いキャンディですね!わかります!」
若返るといえば赤いキャンディ。これはもはや常識。
ブルギニョンヌが赤と青の対比を覚えていたのは、記憶を失うまえのノーチェが、研究中の薬品にそういう名前をつけていたからではないか……謎の赤い物体の映像を見てから、片瀬の予感は確信に変わっていた。
「それでノーチェ姉は子どもの姿に?……でも、ノーチェ姉、すごく困ってるように見えたけど」
「それなんだ」
片瀬はオーバーアクションぎみに人差し指を立てた。
「おそらく、ちょっとだけ肌年齢を戻す程度の効果のつもりだったんだと思う。だが、効き過ぎてしまった」
五所川原博士が顔を上げる。
「赤だけに3倍効いた、ということか!!」
「いや、そうは言ってませんが」
「なるほど赤い奴なら仕方ない」
勝手に納得する博士と、再び困惑するディアを交互に見たあと、片瀬は真面目な顔になって切り出した。
「想定外の結果になったとはいえ、物質合成を人体に行使したことは事実。これが公表されたら、お弟子さんの不祥事ですね、博士」
そう言って写真と資料をカバンにしまう。
「私を脅迫しようと言うのかね?」
五所川原博士はメガネを光らせて顔を上げ、片瀬を見た。
この若い探偵は、まったく物怖じする気配もなく、書類をカバンにしまい直している。
その書類を公にすれば、研究所には少なからぬダメージがおよぶことはこの場の誰もが理解していた。
完全なアウェー、敵地だというのにこの男の余裕は何だ。
「脅迫。……まあ、そのようにとられたほうが話が早いかもしれません」
「しかし、片瀬君、問題が2つだ。
ひとつは、我が研究所の関係者が合成技術を悪用し幼児化して失踪した……なんて話を警察が信用するか、ということ。
もうひとつは、君がここから無事に帰れるのかということだ」
脅迫には脅迫を。
博士はやられたらやりかえすタイプの人間だった。
だがそれは典型的悪役の敗北パターンであることも同時に承知していた。
現に、片瀬はまったく動じる様子もない。
「この資料のほかに、信用させるだけのネタがあるから、今日わざわざ来たんです。もちろん、今僕を始末しても大きな損失になりますよ」
「まあ、そうだろうな……。
つまり、そのネタっていうのは……そういうことなのだね? 今頃になって書類を携えて来たってことは……」
「そういうことです。博士も、それがわかっていたから、そこのお嬢さんをここに同室させたのでは?」
片瀬は「どういうことだってばよ」という顔をしているディアのほうに手をかざして言った。
ディアはびっくりして飛び退く。
この探偵は全貌を知っている。少なくとも知っているように見せかけられる程度には情報を持っている。博士はこの若者を信用することにした。
「では私に選択の余地はない。いいだろう、片瀬君、そのネタを言い値で買おうじゃあないか」
「商談成立だ。えっと、じゃあすいません、このディスプレイお借りしますよ……っと」
片瀬は携帯端末の電源を入れ、それを手際よく研究所のディスプレイと接続した。
手元で操作をすると、1コールを待たずに大声が聞こえてきた。
「ちょっとカタセッ!!何ケータイの電源切ってんの貴方、私は待たせるのは好きだけど待たされるのは大ッ嫌いなんですからね!!」
画像は少し乱れ、やがて青い髪の女の子を映し出す。
博士が、ディアが、口をあけて視線を釘付けにする中、画面の中のノーチェは紳士としての自覚がないだの悲惨な友達しかいないだのと、淀みなく罵詈雑言を紡ぎ続けた。
片瀬はひとしきりそれを受け流したあと、
「でね、のーちゃん、実はこのビデオチャット、研究室につながってるんだけど」
といって突然、携帯端末のカメラを博士のほうに向けた。
ノーチェは一瞬、大人の頃より相対的に大きな目を見開くと、画面を指で覆った。暗い肌色で覆われた画面から、さらにトーンの上がった罵詈雑言が届く。
博士は唖然とし、ディアは口をぱくぱくさせて画面を見ている。片瀬はぱたん、と端末を閉じて、強引に通話を切った。
「じゃあ、ちょっとあの子連れてきますんで」
手を挙げて退室する片瀬の後ろ姿は、完全に父兄のそれであった。
数分して、片瀬は青い髪の少女の手を引いて、再び研究所に戻ってきた。
報告では聞いていたものの、実際に幼児化したノーチェを目の当たりにして五所川原博士は絶句した。
一方ディアは目を輝かせて「ノーチェ姉かわいい!」と連呼した。
ノーチェはそのどちらにも目を合わせず、不釣り合いに長い髪を指先でくるくるいじるばかりだった。
「ほらのーちゃん、ゴメンナサイは?」
片瀬が腰をかがめて頭をなでながら言う。必要以上に子ども扱いすることでノーチェにハラスメントをしているのだ。
このようなハラスメントを静岡弁で「きもいらせ」という。
「み、みんなの前では『ノーチェさん』って呼ぶって言ったじゃない!年上なんですからね!」
ノーチェはやや的外れな非難をした。
しかし片瀬が真面目な顔に戻って「ちゃんと謝るのがオトナだ」と反論したので、ぐぬぬと唸らんばかりの表情で博士のほうを向いた。
「博士、申し訳、ありませんでした……私、取り返しのつかないことを」
「何を言ってるんだノーチェ君、人体合成のことなら……」
「私、ブルギニョンヌを失いました」
その言葉で、さしのべようとしていた博士の手がだらりと戻った。
ディアもさすがに空気を察し、固唾をのんで博士の言葉を待っている。
五所川原博士は静かに言った。
「認めないね。だが一応、説明してみなさい」
ノーチェはすでに泣きそうになっていた。子どもの体は叱られるモードになると勝手に涙が出てくるのだ。
「あの島の調査を進めるうちに気付いたの。あの島の力は『時間』……時間を止めたり、進めたり、やりなおしたり、そういう力を持った何ががある島だったのよ」
島の力は暴走し、滞在していた多くの冒険者を外にはじき出した。いまだに行方不明の者も多いという。
「暴走が始まったとき、うちゅうのほうそくがみだれる!と思った。信じてもらえないと思うけど、草花が瞬く間に枯れたり、砂が石に戻ったりするのを見た。でも私は避難しなかった。この体を元に戻せるかもしれない、って思ったら、足が前に出ていたの」
「少女の願いはエントロピーを凌駕するって言うしね」
片瀬がわざとらしくためいきをつきながら口を挟んだが、ノーチェはそれを気にせず話を続けた。
「島の力に触れたかった。ちょっと時間を進められれば、……あるいは、あの日の過ちをやりなおせたら、って。馬鹿よね、相手は法則も何もない現象なのに」
ノーチェがしゃべっている間、五所川原博士はずっと黙っていた。
それゆえノーチェは話をいったんとめて、上目遣いで博士の様子を伺ったが、無駄だと観念して続けた。
「ブルギニョンヌは、私をかばって、島の力の渦に巻き込まれた。
一瞬で反応が消えていくのが、スローモーションみたいにわかったわ。
私は、気がついたら、島の外に……」
「だいたいわかった」
「でも博士!」
「だいたいわかった、と言ったんだノーチェ君。
……君がこうして戻ってきただけで十分だ」
五所川原博士はそのままノーチェと目を合わせず、片瀬に話しかけた。
「ありがとう片瀬君、私はなんとお礼をしていいのか」
「まあね、幸運でしたよ。
偶然スペインの港町の孤児院に変な青い子がいるって聞かなかったら、絶対見つけられなかったでしょう」
「あんたの場合、偶然って言葉もわざとらしいわ」
ノーチェは完全に元のテンションに戻っていた。
子どもの感情は切り替えが早いのだ。
「それで、君の望みはなんだね?
即金で出せる額はそんなにないが……役に立つかわからん特許ならたくさんある」
「ええ、その報酬の話なんですけどね……」
片瀬はなぜか、切り出しにくそうに言いよどむ。
五所川原博士はいくつか報酬を提示した。
「たとえばコレなんかどうかね、こいつはちょっとした鍵からパスワードまでこれ一本で開けてしまう超時空カギマシンだが」
「いや、そーゆーのはいいです、僕が仕事で使ったら法に触れてしまう」
「では君の望みは……?」
「こんな言い方をすると誤解されるかもしれませんけどね、この子の身柄を預からせて頂きたい」
片瀬はそう言ってノーチェの頭をつかんだ。
腕を組んで「うんうん」と頷いていたノーチェは、突然のこの発言にワンテンポ遅れて奇声をあげた。
なぜかそれに呼応してディアも奇声をあげた。
「わあー!それってつまり、ケッコンですか!ノーチェ姉!」
「違うわよ!馬鹿!勝手に何言ってくれてんの貴方は!」
片瀬と五所川原博士はそれを無視して話を進めている。
「探偵にとって願ってもないんですよ、体は子ども、頭脳は大人っていう存在は」
「それは私に蝶ネクタイ型変声機を発明しろということかね」
「なかなか話が早い、是非お願いしたいところですがそれは別件にしましょう。真面目な話、都合がいいんです。戸籍上は失踪してて、身分証を偽造すればどこにでも潜り込める。助手として最高だ」
ノーチェはカバンをもった片瀬の腕をぐいぐい引っ張っている。
「ちょっ……ちょっと勝手に話を進めすぎでしょ貴方たち!!」
それを見て、なぜか逆側の腕をディアが引っ張り出した。
「ノーチェ姉ばっかりずるい!私も探偵助手やりたいもん!
私も連れてって!泥棒はまだできないけれど、きっと覚えます!」
明らかに何か勘違いをしているディアを、片瀬は「バカなことを言うんじゃーないよ」とルパンの物まねをしながら軽くいなす。
五所川原博士も片瀬に近づいて言った。
「いいだろう、片瀬君。
失踪扱いのままここで匿うよりずっと安全だ。
だたしひとつ条件をつけてくれ」
「……何でしょう」
「いちおう期限を切っておきたい。
この契約、ノーチェ君の体が元に戻るメドが立つまで、としてくれ」
博士は流行りの言葉で期限を指定した。
横を向いたまま、片瀬が大きく頷く。
「ああ、そうですね、それは妥当です。
別にケッコンするわけじゃないので、無期限というわけには行きません」
「なんだ、ケッコンしないんだ」
なぜかディアが不服そうな顔をすると、こんどはノーチェはそっちの腕をつねりにいった。
自由になった片瀬はようやく博士のほうを向く。
「しかし博士、その場合、問題がひとつ」
元に戻るためには、もちろん研究のための機材がいる。
研究所から離れては当然研究はすすまず、元に戻るメドは立たない。
事実上これでは無期限になってしまう。
「片瀬君、その心配は要らない。
どのみち、ノーチェ君の研究機材はここにはない」
ようやくノーチェが会話の流れに追いついてきた。
「そうよ……ブルギニョンヌの合成回路がないと私、
研究の続きをすることもできないのよ」
「だから、片瀬君、ノーチェ君。
ブルギニョンヌを回収しに行きたまえ」
ディアを含め、全員が顔を上げて博士を見た。
「事故が起きてから行方不明になっていたブルギニョンヌだが、まだあの島に存在している。
ノーチェ君の話を聞いて確信した。
ブルギニョンヌは一瞬で、1万年と2千年の時を進められて……
自分がロボであることも忘れ、記憶も淘汰されて、
それでもなお合成を繰り返してシステムを維持している。
今は現地でクロマニョンヌと呼ばれている超原始ロボ。
それは時間の歪みに落ちたブルギニョンヌの姿なのだ」
ノーチェは戦慄した。
博士は静かに続ける。
「また、島に異変が起きている。すぐに向かいなさい。
上陸は難しいかもしれないが、必ず会えるハズだ。
大丈夫、私のロボは死にはしない」
「わかりました、五所川原博士。ありがとうございます」
片瀬は、ノーチェに引っ張られるようにして研究所を出て行った。
子どもの体は行くと決めたら常にBダッシュなのだ。
博士はディアとともにその後姿を見送った。
「行ってしまったな……なんと気持ちのいい連中だろう……」
「別に私の心は盗んでませんけどね」
「それは知っている」
博士は「我々ヒトも、一万二千年の間に自分の正体を忘れ、理性ある特別な存在だと思い込んで生きているのではないか」みたいな鼻につくセリフを用意していたが、別にこのタイミングでディアに言っても仕方ないか、と思って諦めた。
■SUGOMIマップ
http://one.cside.to/alive/fisgm/index.php
コミュメンバーの位置を「凄み」で探知する機能を密かに追加。
Enoの代わりに「c****」を入力することで、そのコミュに参加しているすべてのキャラのEnoを凄みマップに渡します。
「通じた」のよ……今……コミュメンバーを理解出来たと体で感じる……
http://one.cside.to/alive/fisgm/index.php
コミュメンバーの位置を「凄み」で探知する機能を密かに追加。
Enoの代わりに「c****」を入力することで、そのコミュに参加しているすべてのキャラのEnoを凄みマップに渡します。
「通じた」のよ……今……コミュメンバーを理解出来たと体で感じる……
紳士アイRequiem
http://tebasaki.damu.info/fieye/index.htm
■概要
・FalseIslandの冒険結果をスキャンし、デュエル(練習試合)・通常戦闘・闘技大会で各キャラの使った技、クリティカル数、ダメージなどを計算する。
・結果URLに「#DUEL」があればデュエル/練習試合、「br/k」があれば闘技大会と判断してスキャン。
・付加でのダメージ(追撃・光撃・反撃など)は未対応。がんばりたいが。
・同名キャラは区別しません。バハムートとかハデに撃ち合うなって。
ブックマークレットがあるので、利用できれば利用したらいいんじゃないでしょうか。
http://tebasaki.damu.info/fieye/index.htm
■概要
・FalseIslandの冒険結果をスキャンし、デュエル(練習試合)・通常戦闘・闘技大会で各キャラの使った技、クリティカル数、ダメージなどを計算する。
・結果URLに「#DUEL」があればデュエル/練習試合、「br/k」があれば闘技大会と判断してスキャン。
・付加でのダメージ(追撃・光撃・反撃など)は未対応。がんばりたいが。
・同名キャラは区別しません。バハムートとかハデに撃ち合うなって。
ブックマークレットがあるので、利用できれば利用したらいいんじゃないでしょうか。



