【旅立ち】
不思議な力が消滅し、不思議な島はただの海に変わった。
クロマニョンヌは以前言っていた。
「オラはこの島から出えーねえズラ。そーゆう決まりズラ」
出えーねえ、とは、出られない、の意味である。
しかし、その島が消滅した以上、
その「決まり」とやらも変わったのではないだろうか?
クレイは勇気を出して聞いてみた。
「クロマさんはどうするんですか?」
クロマニョンヌは答えない。
今までも、老人のようにぼーっとしていることはよくあった。
推定12000歳という高齢を考えれば仕方のないことだ。
そう考えて、しばらく波の音を聞きながら待った。
「オラ、行かなきゃなんねーズラ」
突然クロマニョンヌは強い口調で言った。
自分から何かしたいというだけでも珍しいのに、
初めて見せる強い意志にクレイは驚いた。
「このまんまでは世界が大変なことになるズラ。
原子力発電に変わって、原始力発電を普及させねーと、
文明が人類を滅ぼしてしまうズラ!」
「ちょっと何言ってるかわからないです。」
「そーゆう訳だんて、クレイ、レイム、
オラちょっくら日本に出かけてくるズラ」
クロマニョンヌはそれだけ言って、ざぶざぶ海を泳いでいった。
なぜか後ろ向きに、全速力で、こちらに手を振りながら。
あっけにとられながら、2人は彼を見送った。
大海原を進みながら、クロマニョンヌは
「……2人にはああ言うしかなかったのデス」
と独り言を言った。
絶対、ほかに言い様はあったと思うが、
2人の前では最後までクロマニョンヌでいたかったのだ。
* o ∴::.。.:*・゜.∴ * o∴・.゚.・∴..*.+.:: ∴ o *
数週間後、日本・片瀬探偵事務所。
「久し振りだねえ、ロボ……ずいぶんデザインが変わったね」
そういって彼を迎えたのは、探偵の片瀬ケイヤ。
かつてクロマニョンヌがブルギニョンヌだったころ、
オーナーであるノーチェと共に行動していた男である。
「五所川原博士の研究所で打ってもらった信号が、
いまさら君のところに届くとは思わなかったよ。
のーちゃんは今、お使いに出ているけどそのうち戻ってくるよ」
数年ぶりの再会だというのにこの男は平然としている。
時間を進められたブルギニョンヌにとっては12000年ぶりということになるが、そのへんはロボには関係なかった。
「ノーチェ様は怒っておられマスか?」
「逆かな、謝りたいって」
「カタセ様には感謝の言葉もございマセン。
ノーチェ様の危ないところを救って下さったとききマシタ」
「別に…打算でやったことだし。
代わりに12000年の歪みに落ちた君のほうが、よっぽど偉い。
ところでどこで聞いたのそんな話」
「ここに来る途中、ノーチェ様のtwitterで」
片瀬はコーヒーを吹いた。
不思議な力が消滅し、不思議な島はただの海に変わった。
クロマニョンヌは以前言っていた。
「オラはこの島から出えーねえズラ。そーゆう決まりズラ」
出えーねえ、とは、出られない、の意味である。
しかし、その島が消滅した以上、
その「決まり」とやらも変わったのではないだろうか?
クレイは勇気を出して聞いてみた。
「クロマさんはどうするんですか?」
クロマニョンヌは答えない。
今までも、老人のようにぼーっとしていることはよくあった。
推定12000歳という高齢を考えれば仕方のないことだ。
そう考えて、しばらく波の音を聞きながら待った。
「オラ、行かなきゃなんねーズラ」
突然クロマニョンヌは強い口調で言った。
自分から何かしたいというだけでも珍しいのに、
初めて見せる強い意志にクレイは驚いた。
「このまんまでは世界が大変なことになるズラ。
原子力発電に変わって、原始力発電を普及させねーと、
文明が人類を滅ぼしてしまうズラ!」
「ちょっと何言ってるかわからないです。」
「そーゆう訳だんて、クレイ、レイム、
オラちょっくら日本に出かけてくるズラ」
クロマニョンヌはそれだけ言って、ざぶざぶ海を泳いでいった。
なぜか後ろ向きに、全速力で、こちらに手を振りながら。
あっけにとられながら、2人は彼を見送った。
大海原を進みながら、クロマニョンヌは
「……2人にはああ言うしかなかったのデス」
と独り言を言った。
絶対、ほかに言い様はあったと思うが、
2人の前では最後までクロマニョンヌでいたかったのだ。
* o ∴::.。.:*・゜.∴ * o∴・.゚.・∴..*.+.:: ∴ o *
数週間後、日本・片瀬探偵事務所。
「久し振りだねえ、ロボ……ずいぶんデザインが変わったね」
そういって彼を迎えたのは、探偵の片瀬ケイヤ。
かつてクロマニョンヌがブルギニョンヌだったころ、
オーナーであるノーチェと共に行動していた男である。
「五所川原博士の研究所で打ってもらった信号が、
いまさら君のところに届くとは思わなかったよ。
のーちゃんは今、お使いに出ているけどそのうち戻ってくるよ」
数年ぶりの再会だというのにこの男は平然としている。
時間を進められたブルギニョンヌにとっては12000年ぶりということになるが、そのへんはロボには関係なかった。
「ノーチェ様は怒っておられマスか?」
「逆かな、謝りたいって」
「カタセ様には感謝の言葉もございマセン。
ノーチェ様の危ないところを救って下さったとききマシタ」
「別に…打算でやったことだし。
代わりに12000年の歪みに落ちた君のほうが、よっぽど偉い。
ところでどこで聞いたのそんな話」
「ここに来る途中、ノーチェ様のtwitterで」
片瀬はコーヒーを吹いた。
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